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神戸地方裁判所 昭和62年(行ウ)1号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  申立

(原告)

一  被告が昭和六一年一一月一七日に原告に対してなした神戸市公認水道工事業者の認可を取消した処分及び責任技術者の資格を取消した処分は、いずれもこれを取消す。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決。

(被告)

主文同旨の判決。

第二  主張

(原告)

〔請求の原因〕

一 被告は、神戸市水道条例(以下、「条例」という。)に基づく神戸市水道事業管理者であり、原告は、昭和五三年一二月一日被告により認可(認可番号二三〇)された神戸市公認水道工事業者(以下「公認業者」という。)であり、昭和五六年一月一三日に資格を取得(資格番号六〇五)した責任技術者で、川南水道商会の商号で水道工事業を営んでいる。

二 被告は、原告に対し、昭和六一年一一月一七日公認業者の認可取消し及び責任技術者の資格の取消しの行政処分(以下「本件各処分」という。)をした。

本件各処分は、次のとおり違法である。

1 公認業者の認可取消処分の理由は、原告が神戸市公認水道工事業者規程(以下「業者規程」という。)五四条一項一号及び五七条一項一号に該当したというものであるが、原告に条例に違反する行為はあったが、それは公認業者の認可の取消しに相当するものではない。

2 責任技術者の資格取消処分の理由は、原告が業者規程五七条一項一号に該当したというものであるが、原告には右条項に該当する行為はない。

3 業者規程五四条二項に「管理者は、前項の認可の取消しを行うときは、委員会の意見を徴して行う」とされており、認可取消しについては、管理者に神戸市公認水道工事業者資格審査委員会(業者規程四七条、以下「委員会」という。)の意見の聴取が義務づけられている。しかるに、本件各処分につき、右委員会は設置開催されておらず、業者規程に定められた手続を経ていない重大な手続違反がある。

よって、原告は、本件各処分の取消しを求める。

(被告)

〔請求の原因に対する答弁〕

一項は認める。

二項中、本件各処分がなされたことは認めるが、それが違法で、原告に認可の取消し、資格の取消しに相当する行為はないとの点及び委員会の意見を聴取していないとの主張は争う。

〔被告の主張〕

一 本来、神戸市水道事業の工事の設計及び施行は管理者が行うことになっているが、それに代って公認業者にさせることが許されている(条例二一条)。そこで、神戸市は業者規程を施行して、公認業者の認可方法、遵守義務等を定めているが、認可の条件は厳格で、営業力や経済力のほかに責任技術者を一名以上有することを必須の条件とし(業者規程二条一項四号)、責任技術者には、工事の施行にあたっての技術上の監督の職務を誠実に行わせることを要求するとともに(業者規程三五条)、条例や規程等の遵守義務をも定めている(業者規程三三条)。特に責任技術者制度を設けているのは、公認業者には法人が多いので、工事の技術上の監督者として、常勤の工事責任者を工事現場に常駐させ、神戸市水道事業の技術水準の確保に当たらせるためである。

なお、公認業者と責任技術者は、資格は別個のものであるが、同一人が資格を兼務することは認められている(業者規程三四条)。

二 給水装置等の工事をしようとする者及び給水を受けようとする者はそれぞれ水道事業管理者の承認を受けなければならないとされ(条例二一条一項、五条一項)、この承認にあたって、工事業者及び責任技術者は給水工事許可申請書兼給水工事設計書を提出するが、そこには工事業者名及び責任技術者名を記載することになっている。そして、工事が完成すれば、当該工事が給水装置工事施行基準に合致しているかどうかを被告において検査し、検査に合格すればその時点で給水が可能となり、その建物の給水装置の使用者が管理すべき量水器を設置し、水道局において量水器を登録し、管理することになる。

したがって、工事用水として使用する給水装置工事も承認を要し、建物の給水装置が完成して使用するには右の手続を要するのであり、これに違反して工事をすれば、条例二一条一項違反の無届工事、あるいは同五条一項違反の不正使用となる。

三 公認業者、責任技術者に業者規程五四条一項、五七条に該当する行為があった場合、被告は、違反事項等の内容に応じて減点を行い、過去の一定期間内の減点数に基づいて措置を講じることにして処分の適正化を図っている。認可、資格の取消しは五〇点以上で、減点数の計算期間は、違反事実について営業所から業務課へ報告があった場合、業務課の受理日から過去二年間の違反行為が対象になる。

四 原告に関し、右の諸規定に反する次のような水道の不正使用、無届工事が摘発発見され、原告は、いずれについても違反行為を自認し、過料等も支払納付している。

違反事実一

昭和五九年一二月二四日発見の違反

場所  神戸市西区王塚台三丁目四六

違反行為  管理者の承認を得ずに、建物の給水装置工事を行い、竣工させた。すなわち、建物の給水に、原告が以前に配水管から給水管を取り出すために水道局から貸与された工事用の量水器を使用した。

法的根拠  条例二一条一項違反

(無届工事)

違反事実二

昭和六一年八月八日発見の違反事実

場所  神戸市垂水区西舞子一丁目九-一〇(八戸のマンション)

違反行為  管理者の承認を得ずに、建物の給水装置工事を行った。

すなわち、原告は昭和六一年三月末頃から建物の給水装置の工事を行っていたが、発見されるまで量水器を設置せず、継足管で水道を不正使用していた。

法的根拠  条例二一条一項違反

(無届工事)

同五条一項違反(不正使用)

違反事実三

昭和六一年八月八日発見の違反事実

場所  神戸市垂水区西舞子一丁目七-三九(一五戸のマンション)

違反行為  管理者の承認を得ずに、建物の給水装置工事を行い、他所の工事用量水器を転用して据付け違反の摘発を免れようとした。

すなわち、原告は、昭和六一年四月一日以後、建物の給水装置の工事を行っていたが、継足管で水道を不正使用し、同年八月六日に至り、同区西舞子一丁目九-一〇(前記違反事実二の違反場所)の工事用に水道局から貸与されていた量水器を据付けた。

法的根拠  条例二一条一項違反

(無届工事)

同五条一項違反(不正使用)

五 これらの違反行為は、認可・資格取消事由の対象になるところ、前記の減点基準からすると、減点数は違反事実一は、無届工事で一〇点、同二は、無届工事の一〇点と不正使用の一〇点で計二〇点に、過去の違反から二年以内の行為であるから加算点五点を加えた計二五点、同三は、同二と同様二五点で、合計六〇点の減点となる。

なお、原告には、期間の関係で減点の対象にはならない、昭和五九年六月二〇日発見された、神戸市須磨区白川台五丁目五八で、管理者の承認を得ずに給水装置工事を行い竣工させ、給水契約がなされていない場所に別の場所に設置されていた量水器を据付け不正に使用した条例二一条一項違反(無届工事)、同五条一項違反(不正使用)のほか、これまで多数の減点の対象となった条例違反がある。

六 そこで、被告は、業者規程に定める委員会の意見を徴して、公認業者の認可取消しの処分を行ったのであるが、委員会は、独立の行政機関ではなく、水道局総務部長が委員長になっている内部機関で、業者規程五四条二項によれば、取消しの権限は管理者にあり、その際には委員会の意見を徴して行うことになっていて、委員会に取消しを行う権限はない。本件では、原告が被告主張のような違反事実をしたかどうか及びそれらの違反事実が取消事由に該当するか否かが問題であって、委員会における資料等の提出がなくとも十分審理しうるものである。

七 川南水道商会においては、責任技術者は原告一人だけであったから、原告は、責任技術者という立場においても、前記の無許可給水工事及び無許可給水の条例違反に関与していたものである。よって、責任技術者たる原告についても、条例二一条一項、五条一項の違反があったので、取消しがなされた。

八 違反事実一につき、原告は、申請時の業務を担当していた従業員が退職したことや、他に緊急を要する仕事があって著しく多忙で申請を失念したと弁解するが、時間を要する建物内部の給水装置工事を完成させており、時間的な余裕があったと推定できるから、この弁解は失当である。

通常、建物内の給水装置工事に要する日数(給水装置工事は通常、建物の建築に合わせて施行される。)と工事申請に要する日数(水道局では、即日に申請書の審査を行っている。)を比較すると、前者の方が多くの日数を要する。原告は、水道工事業者として給水装置工事の実績を積んでおり、当然その点を十分承知しているはずで、当該行為は故意に行われたものと判断せざるを得ない。

違反事実二について、原告は、給水装置工事をしたのでないから、認可の取消処分の対象にはならないと主張するが、無届けで故意に継足管を接続して不正に給水を受けたのであり、この行為が、給水装置工事であることは明らかである。また、下請業者の行為であるから過失であるとの主張も、そもそも許可なく下請けさせることは業者規程により禁じられているのに、当該不正行為の責任を下請業者に転嫁するのは公認業者として許されるものではない。

違反事実三につき、原告は、当該工事現場は違反事実二の現場と同一の現場であると主張するが、二つの現場は、申込者も住居表示も異なっており、距離も約二〇〇メートル離れている。

(原告)

〔被告の主張に対する答弁〕

一項は認める。

二項中、責任技術者の資格取消しの根拠の点は争うが、その余は認める。

三項は不知。

四項のうち、原告の施工した工事に関して被告が主張するような違反があったことは争わないが、それが原告の違反行為であるとの点並びに被告主張の減点数になることは争う。

五ないし八項中、川南水道商会には責任技術者は原告一人であったことは認めるが、その余は争う。

〔原告の反論〕

一 公認業者認可取消しについて

1 違反事実一の、昭和五九年一二月二四日被告発見の違反行為の事実関係はほとんど被告主張のとおりである。しかし、原告は、工事用の量水器から一般家庭用への用途変更申請を失念しただけであって、過失による無届工事にすぎない。

建物新築現場において、大工・左官用の給水のために、水道業者は工事用の量水器(メーター)の設置の申請をし、建物が完成し、その給水装置による給水にともない、この量水器を一般家庭用に用途変更の申請をなすのが通例である。川南水道商会では、当時申請等の業務を担当していた従事員が退職したことや、他に緊急を要する仕事があったりして著しく多忙であったため変更申請を失念したのである。過失による場合は減点基準では五点の減点となる。しかるに、被告は故意に行ったものとして一〇点の減点をしているのは不当である。

2 違反事実二の、昭和六一年八月八日被告発見の違反行為とされている、神戸市垂水区西舞子一丁目九-一〇の現場の件は、原告は給水装置工事は行っていないから、原告に条例二条一項違反はない。この現場には、元から給水装置は存在しており、原告が関与したのは受水槽以下の工事で、給水装置設置工事ではないから、条例二一条一項の管理者の承認を要しなかった。

すなわち、給水装置の構造及び材質に関する規程三条によれば、「給水装置工事の設計範囲は、直接給水するものは給水栓まで、受水タンクを設けるものは受水タンクの流入口まで」となっているところ、原告がしたのは受水槽以下の工事で受水槽の流入口までの工事はしていない。

また、この現場は、原告の専属的下請業者である芦谷由雄(以下「芦谷」という。)が全面的に施工したもので、原告は関与していない。したがって、原告に監督義務違反の問題はあっても、原告自らが条例五条一項に違反したのではないので、被告の主張は誤りである。

3 違反事実三については、原告の専属的下請業者である芦谷が原告の知らない間に量水器を当該現場に設置したのであって、原告は関与していないから、過失による無届工事として五点減点をもって相当とし、被告の主張するように故意による条例二一条一項違反として、二〇点減点の対象とするのは不当である。

さらに、この違反事実三は、違反事実二の現場と同一のものであるから、別個の違反とするのは不当である。

そうすると、原告の違反行為はいずれも過失によるものであるから、違反事実三につき条例五条一項違反を加算し、加算点五点を加えても最大限二五点にしかならず、資格取消しの対象たる五〇点には達していない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一  請求原因一項の事実及び同二項の本件各処分がなされたこと並びに被告が主張する条例等の規定が存することは、当事者間に争いがない(〈証拠〉によれば、本件に関係する条例等の定めは、別紙関連法規目録記載のとおりである。)。

右条例等によれば、給水を受けようとする者、給水装置の新設等の工事をしようとする公認業者は、管理者に申込み、その承認を得なければならず、あらかじめ管理者の検査に合格した設計に基づいて工事を施行し、工事完成後、直ちに管理者の検査を受けなければならず、公認業者に条例、条例施行規程、業者規程又は業務に関する管理者の指示に違反する行為、その他不都合な行為があったときは、管理者たる被告は、公認業者の認可を取消し、あるいは期間を定めて認可の効力を停止をすることができ、責任技術者に同様の行為があったときは、資格の取消し、又は期間を定めて有資格者としての取扱いをしないことの処分をすることができる。

二  証人原野武の証言により成立の認められる乙第二号証、同証人の証言によれば、被告は、右各種処分の適正化を図るため、減点制度を採用し、違反行為をその態様により区分して基準となる減点数を設け、公認業者等に違反行為があればこの基準に従って減点し、減点数が五○点を越えると、委員会に付議し、公認業者の認可を取消し、あるいは責任技術者の資格の取消しをしていることが認められる。

この基準は、被告の内部基準ではあるが、処分の適正化を図るためのものとして一応合理的なものと考えられるから、処分がこの基準に合致していることは、被告の裁量の妥当性の根拠となる。

三  〔被告の主張〕四項の違反事実一、二、三の各違反があったことは、原告も争わない。この争いのない事実に、証人原野武の証言により成立の認められる乙第四ないし七号証の各一、二、同証人の証言、原告本人尋問の結果を総合すると、この各違反事実の具体的内容は次のとおりである。

1  違反事実一(昭和五九年一二月二四日発見、神戸市西区王塚台三丁目四六での無届工事)は、水道局が工事用の給水のため原告に貸与した量水器を、申請をしないで工事完成後の建物の給水装置にそのまま使用したものである。

2  違反事実二(昭和六一年八月八日発見、神戸市垂水区西舞子一丁目九-一〇での無届工事、不正使用)は、原告において、昭和六一年四月頃着手した工事に関し、配水管に継足管をつけ、そこから量水器を設置しないで、同年八月八日に発見されるまで給水装置等に給水していたものである。なお、この工事に関し、原告は申請により同月六日に水道局から工事用の量水器を受け取っていたが、この場所には設置せず、違反事実三の行為に利用した。

3  違反事実三(昭和六一年八月八日発見、神戸市垂水区西舞子一丁目七-三九での無届工事、不正使用)は、右違反事実二の神戸市垂水区西舞子一丁目九-一〇での工事に関して水道局から貸与された量水器を別の場所である本件違反場所に設置したが、この工事は昭和六一年四月から施行しており、この時まで量水器なしで給水を受けていたものである。

四  原告は、違反事実一について、一戸建の建物の給水装置工事の場合、工事用と一般家庭用を同時に申請し、工事用の量水器をそのまま建物の給水装置用に切替えるのが通例であるところ、本件の場合、まず工事用の給水のみを申請したもので、このようなことは年に一、二回しかなく、そして申請時の業務を担当していた従業員が退職したことや他に緊急を要する仕事があったことから著しく多忙であったため、建物の給水装置用の申請を失念したもので、工事用の量水器の設置は期間が定められており、またこのままだと水道料金は原告が負担することになるので、これが過失であることは明らかであると弁解する。

しかし、建物内部の給水装置工事の完成には相当日数を要するから、建物の給水装置用の申請をする時間的余裕は十分にあったはずであるし、また原告本人尋問の結果によれば、原告は、水道業者組合が行った講習会等で、条例等についての説明を再三受けていることが認められるので、この弁解をそのまま受けとることはできないが、仮に原告の主張をそのまま採用しても、減点基準によれば、五点の減点となる。

次に違反事実二について、原告は、この建物に関する給水工事に関与していないとか、本件では、家庭用給水装置の設計ができていなかったところ、原告は当局が工事用と一般家庭用とを同時に給水申請するよう求めていると誤解していて、このままでは申請をすることができないと思い、建築業者には、隣家からその了解を得て給水を受けるように言い、そのようになっているものとばかり思っていたのであるが、原告の下請業者である芦谷が配水管に継足管をつけて給水を受けていたのであって、これが無届工事、水道の不正使用に当たることは論を待たないが、原告自身は事情を知らなかったのであり、故意ではなく、減点基準の適用においては過失として処理するべきだと主張する。

しかし、管理者の許可がない下請業者の行為は、公認業者自身の行為と評価せざるをえない(業者規程二五条参照)ところ、下請業者の芦谷に無届工事、水道の不正使用の故意があったことは、原告も認めるところである。しかも、原告は、公認業者として、管理者たる被告の承諾を得なければ、給水を受けられないことを充分承知しているのに、自己が関与した水道工事に関し、四か月も許可の申請をしないまま放置し、さらに、前記乙第七号証の二によれば、本件に関し、工事現場も知らないことが認められ、このような原告の態度からすると、芦谷の無届工事、水道の不正使用を容認していたともみうるから、原告に故意があったと認めるのを相当とする。

そうすると、この違反行為は、許可なく工事をし、盗水をしていたのであるから、減点基準によれば、無届工事の一〇点、不正使用の一〇点に、違反事実一があるため五点が加算されて計二五点の減点になる。

違反事実三について、原告は、違反事実二と同様、下請業者たる芦谷由雄のしたことで原告は関与していないとか、場所が近接しているから違反事実二と同一の違反とみるべきであるとか、盗水よりも違法性が少ないと思ったとか弁解するが、下請業者のしたことであるという弁解が失当である上に、原告に無届工事、水道の不正使用の故意があったともみうることは、違反事実二について述べたところと同様であり、また、たとえ場所が近接していても(もっとも、原告の供述によっても、六〇メートルはあることになる。)、別棟の建物であれば別個の給水工事で、それに関してなされた違反行為があれば、そこに設置された量水器がその近接の工事に関して水道局から渡されたものであっても、それは別個の違反行為と評価されて当然である。

よって、原告の行為は、無届工事と不正使用となり、違反事実二と同じく加算されて減点数は二五点となる。

そうすると、原告の弁解につき考慮の余地があるのは違反事実一についてのみで、そしてこの弁解を考慮しても、原告の減点数は認可の取消しの基準である五〇点を越える五五点となる。

五  〈証拠〉によれば、原告は、期間の関係で減点の対象にはならないが、昭和五九年六月二〇日被告に発見された、神戸市須磨区白川台五丁目五八で、管理者の承認を得ずに竣工させた、給水契約がなされていない給水装置に別の場所に設置されるべき量水器を設置した無届工事、不正使用の事実があるほか、昭和五六年に下水道局の公印を偽造、行使し、五か月間の認可停止の処分を受けたことが認められる。

この事実に、原告の前記各違反が被告の内部基準である減点基準で公認業者の認可の取消しの減点数を越えていることからすると、被告の認可の取消処分は、裁量権の範囲内にあるというべきである。

六  この取消しの処分につき、原告は、業者規程四七条に定める委員会が設置されず、同五四条二項に定めたその意見も徴されなかった違法があると主張するが、前記甲第一号証、原告本人尋問の結果からすると、この委員会は設置されており、かつ意見も徴されたと推認されるが、委員会は水道局総務部長を委員長とする被告の内部機関であるから、その意見が徴されなかったとしても、被告のした本件取消処分が違法になることはないというべきである。

七  次に責任技術者の資格取消しについて検討するに、業者規程三三条は、責任技術者にも条例、業者規程等の遵守義務を定めているところ(別紙関連法規目録参照)、証人原野武の証言、原告本人尋問の結果によれば、給水工事許可申請書兼給水工事設計書には工事業者名及び責任技術者名を記載することになっていること、川南水道商会では、責任技術者は原告一人だけであったことが認められる。そうすると、前記違反事実一ないし三の条例違反の行為について原告は責任技術者という立場においても関与していたことになり、したがって、業者規程五七条により資格の取消しをした被告の処分に違法はない。

八  以上のとおり、本件各処分の違法を理由とする本訴はすべて理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 林 泰民 裁判官 岡部崇明 裁判官 植野 聡)

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